私が幼い頃の母の実家の家には竃がありました。
プロパンガスも使っていたみたいだけど
かまども健在で、その火の番をするのが
田舎に行く楽しみのひとつでした。
広い土間は、台所に続いていて、竃があって
もうあまり細かいところまでは思い出せないけど
とてもいい雰囲気だったのです。
街で暮らしていては、そうそうたき火をすることもありませんでしたから
燃えている火をみているだけで、面白かった。
おばあちゃんは、一緒に座って火をつけてくれ
薪をくべて、とりとめないおしゃべり。
じゃあ、頼んだよとおばあちゃんがおかずを作りに行くと
私は、ちょこんとすわったまま、竃の様子をながめ
実にいい加減に薪を足したりしていたものです。
やがてご飯のあまーい匂いが漂ってくる。
ことこととまな板の音以外、ほとんどなんにも音がしなくて
竃の火がささやくような音をたてている。
思い出したように蝉がミンッと鳴いて、竹やぶをゆらす風の音がさわさわ。
竃の前に座っている時間は、いつまでも続くような、
あっという間に終わってしまう夢のような、不思議なものでした。
竃があったら、あの時の時間をもう一度体験できるのかもしれません。
やっぱり竃があったら、楽しいぞ。
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